飲食店のレシートとインボイス制度
この記事は一般的な情報をまとめたもので、税務上の判断を保証するものではありません。お店の状況によって取り扱いが変わることがあります。詳しくは税理士や、国税庁の案内(国税庁)でご確認ください。
インボイス制度が始まってから、「お客様にレシートを求められた」「領収書の書き方で迷った」という声を耳にします。この記事では、飲食店のレジ周りで知っておきたいポイントを、できるだけやさしく整理します。
インボイス制度の基本
インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除を受けるために、一定の事項が書かれた書類を保存する仕組みです。お客様が会社や個人事業主で、飲食代を経費にして消費税の申告をしている場合、その書類が必要になることがあります。
お店の側で考えるべきことは、大きく二つです。
- お店自身が、適格請求書発行事業者として登録しているか(登録は任意です)
- 登録している場合、お客様に渡すレシートや領収書に、必要な事項が書かれているか
登録していないお店は、インボイスを発行できません。登録するかどうかは、売上の規模、お客様の層、課税事業者か免税事業者かなどによって考え方が変わるため、税理士や税務署に相談して決めるのが安心です。
飲食店は「適格簡易請求書」を使える
不特定多数のお客様を相手にする飲食店は、通常の適格請求書ではなく、記載事項が少し簡単な「適格簡易請求書」を交付できる業種のひとつとされています。レジで出すレシートが、その役割を果たす形です。
一般に、適格簡易請求書には次の事項を書きます。
- 発行する事業者の氏名または名称、登録番号
- 取引年月日
- 取引の内容(軽減税率の対象品目がある場合は、その旨がわかるように)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税込み)
- 税率ごとの消費税額等、または適用税率
通常の適格請求書にある「相手方(宛名)の氏名または名称」は、簡易請求書では書かなくてよいとされています。ただし、お客様から宛名を求められたときの対応は、あらかじめお店で決めておくとよいでしょう。
登録番号の書き方
登録番号は、「T」と13桁の数字で表されます。法人の場合は、法人番号と同じ数字が使われます。個人事業主の場合は、個人ごとに別の番号が付けられます。
- レシートに、店名のそばなど、目に入りやすい位置に印字する
- 登録番号は事業者ごとに付くので、店舗の名義が変わるときは確認する
- 登録番号は、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で誰でも確認できる
手書きの領収書や、既存のレジの設定を変えるときには、この番号を書き忘れていないかを、まず確かめましょう。
税率ごとの合計と税額
消費税の税率には、標準の10%と、軽減税率の8%があります。インボイスでは、税率ごとに区分した合計額と、その税額(または適用税率)を示すことが求められます。
たとえば、店内で飲食した合計が10%の対象のみなら、レシートには「10%対象 〇〇円 消費税 〇〇円」のように書きます。10%と8%の品が混ざる場合は、税率ごとに行を分けます。
消費税額の端数処理も、知っておきたい点です。一般には、一枚のレシートの中で、税率ごとに1回だけ端数を処理するとされています。品目ごとに端数を処理して足し上げる方法は、認められないのが原則です。端数を切り捨てるか、切り上げるか、四捨五入するかは、お店が決めてよいとされています。ただし、一度決めたルールは継続するのが一般的です。
軽減税率8%と10%の考え方
飲食店で迷いやすいのが、8%と10%の線引きです。一般に、次のように整理されます。
- 店内での飲食(イートイン):外食にあたり、10%
- 持ち帰り・テイクアウト:飲食料品の譲渡にあたり、8%
- 出前・配達:一般的な出前は、8%とされることが多い
- お酒:軽減税率の対象外。持ち帰りでも10%
ポイントは、「お客様が店内で食べるのか、持ち帰るのか」を、注文の時点で確認することです。店内で食べるつもりで注文して、あとから持ち帰りに変えるといった場合は、取り扱いが変わることがあります。また、イートインスペースの有無や、テーブルの使い方によっても判断が分かれることがあるので、判断に迷う場合は、国税庁の案内や税理士に確認してください。
メニューの価格を税込みで表示している場合は、持ち帰りと店内で価格が変わる点にも注意が必要です。この点は、メニュー表の作り方と価格表示の記事も参考にしてください。
手書き領収書との違い
「領収書をください」と言われる場面は、今でも多くあります。レシートと領収書は、似ているようで役割が違います。
- レシート:商品とお金のやり取りを記録した控え。記載事項を満たせば、適格簡易請求書として使えます
- 領収書:代金を受け取ったことを証明する書類。宛名と但し書きを書くことが多いです
インボイス制度のもとでは、領収書も、適格請求書の記載事項を満たしていれば、その代わりに使えます。手書きで書く場合は、登録番号、税率ごとの合計額、消費税額(または適用税率)を忘れずに書きます。日常的に求められる店では、あらかじめ登録番号を入れたスタンプや、記載欄のあるつづりを用意しておくと、書き忘れを防げます。
宛名と但し書きは、お客様の希望に合わせて書きます。「上様」でよいかどうかは、お客様の経理の考え方によるので、決めつけず、希望を聞きましょう。
レジやアプリで気をつけたいこと
レシートを発行するレジやアプリを選ぶ、または設定するときは、次の点を確かめておくと安心です。
- 店舗名と登録番号が、レシートに印字できるか
- 税率ごとの合計額と消費税額が、分けて表示されるか
- 店内と持ち帰りで、税率を切り替えられるか
- 端数処理の方法が、お店のルールと合っているか
- レシートの控え(記録)を、一定期間保存できるか
発行したレシートの控えは、税務上、一定期間保存することが求められます。保存期間や方法は、税理士や国税庁の案内で確認してください。
お店で整理しておきたいこと
- 適格請求書発行事業者に登録するかどうか(税理士に相談)
- 登録した場合の登録番号を、レシートと領収書に入れる
- 店内10%、持ち帰り8%、お酒10%の線引きを、スタッフと共有する
- 領収書を求められたときの書き方と、宛名の聞き方を決める
- レシートや領収書の控えの、保管場所を決める
制度の運用は、細かな取り扱いが見直されることもあります。この記事の内容にとらわれず、最新の情報は国税庁の案内と、担当の税理士に確認してください。
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